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ケチャップマン 「ドクトル・トメイトの巻」 |
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くったくたの ばっすばす
けちゃっぷ けちゃっぷ くったばす
頭の先っぽつまったら
つまったまんまで折り曲げた
無理してくたっと折り曲げた
拍子にばすっと飛び出して
けちゃっぷちゃっぷり背中に着地
それみろおやじ背広の裏地
くったくたのばっすばす
けちゃっぷ けちゃっぷ くったばす
ケチャップマンはケチャップ容器
押せば中身が出る仕組
押して出すならねらいもつくが
不意に出るから困ってしまう
振り向き体をねじるとき
満員電車で押されぎわ
今朝は駆け行く男性が
落とした財布に気がついて
さっとり手にとりくたっとかがむ
拍子にケチャップばすっと飛んだ
よかれと思って差し出た親切
人の背広を汚す不始末
いたしかたなしかな体の反動
痛し悲しはガラスのハート
もうやるまじと悔いるは幾度
くったくたのばっすばす
今日もどこかで繰り返す
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思いつきとか流れとか
その場の勢い素直な反応
計算できないあれこれを
ぐっと押さえて避ける不始末
そのうち人との接触機会減り
ひとりの時間が増えていた
悩めるケチャップ近ごろ思う
ほんとの居場所はどこだろう
ケチャップ容器でこの容姿
人との違いは百も承知
それを生かすための自分探し
考え巡って歩くも当てなし
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街転々の後に発見
ポテトフライの専門店
親近感持つ赤い看板
マッチングもよしポテトと自分
店を賑わす若い男女や
子供に引かれる笑顔の母親
普段は行かない種類のお店で
決断できずに
横切るふりして横目に確認繰り返す
ため息それとも深呼吸
しゅうと大きく息つけば
どうどう巡った考え消えて
ぶうんと開く自動ドア
促されるよに踏み入った
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ケチャップのことなら任せてください。カリッと揚がったポテトにぴったりマッチするはずです。赤と黄色のコントラストも食欲を刺激しますよ。
無尽蔵なほど飛び出す惹句と
無責任なという気持ちのギャップ
思い付くまましゃべり終え
重い沈黙訪れた
大きな背中の店長が
帳簿をつけるペンの音
追いつけ追い越せ重なるは
机の時計の針の音
針の独走しばらくあって
店長ようやく口開く
今ケチャップは流行らないよね。
うちはポテトはもちろん、ソースにもこだわっているからね。今の売れ筋はバジルオリーブとか、ゴルゴンゾーラクリームとかそのあたりだよ。最近のお客さんは大抵のものに飽きているから、ソースくらいは意表をつかないことにはねえ。うちのポテトはそのままでも絶対おいしいから、本当はソースなんてなくてもいいくらいなんだよ。まあちょうど人手が足りないところだったから、試用期間ということでよかったら、うちでやってみるかい。
現場の反応ふまえた言葉の持つ重み
なんらの反論できるはずなく押し黙る
背に腹は変えられないと
底をついた貯金の額が頭をもたげ
ぜひやらせてくださいと
落ち着いた静かな声で頭を下げた
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おいおい、だめじゃないか。それじゃあおれのイモの味が台なしだ。うちはイモ屋なんだから。イモを揚げられなかったらもう話にならないんだから。
踏む白雪に遥か北海越え来た店長五年前
がむしゃらに裸一貫イモ売りありく
初めは街頭手売りから
二年目は
注文受けての揚げたてお届けバイク便
次第に評判広がって
バイクが軽トラ 屋台が店鋪
二坪 四坪 十二坪
どうにかここまで漕ぎ着けた
そんな事情はつゆ知らず
想像及ばぬケチャップマン
切って揚げるだけのポテトフライ
きっとできるはずがとんでもない
油は上下で温度が違う
初めは上部でじっくり熱入れ
後から下層でカリッと仕上げる
そのタイミングみて前のザル上げ
布かけ蒸らして空気にさらす
工程詰まって秒単位
両手使って広範囲
ポテトの皮むき皮切りに
切り拭き乾かし冷しに揚げ盛り
鬼店長も声を枯らせて
閉店あとの夜を徹する
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お店の奥の揚げ場を出られず
ケチャップの見せ場にも恵まれない
蒸気も上がって売れ行く黄色
容器の中でとどまる赤色
色の対比にさいなまれ
自宅のベランダ外を眺めて黄昏れる
家々に灯る蛍光灯の青
営々と遠く他人ごとのよう
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ある日の快晴開店間もなく
うろうろモタつくうろんなお客
ドクトル・トメイトそう名乗る
トマトの頭に博士の白衣
しわがれクセあり長いヒゲ
ヘタの真ん中茎のハナ
ピンと反り上げ高貴のさま
いらっしゃい
店長あいさつ大きく太く
様子をうかがう博士の体はびくりと縮む
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あれをくれ
トメイト博士が唐突に
ケチャップマンを指して言う
普段なら朝から晩まで揚げ場だが
ゴミを集めに店頭へ
偶然出ていた時だった
いやあ、お客さんね、あいつは売り物じゃないんですよ。
申し訳なく断る店長
引きも下がらぬトメイト博士
あれをくれ
終にはその身を乗り出して
不思議なしらべを口にした
あれをくれったら あれをくれ
くったくたの ばっすばす
ちゃっぷっと飛び出て染みついた
足りないぶんだけ なめさせろ
タスケがほしけりゃ なめさせろ
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歌は終わりと思いきや
も一度戻って繰り返す
博士の背後はおなかを減らした客の列
天井仰いだ店長汗ふき
黒ぶち眼鏡をくいっと上げた
ふうとひとつ深い息つき
ケチャップマンを呼び寄せた
おい、ケチャップマン、それは出せるのかい?
ケチャップ手をふきうなづいて
ヘッドキャップを回しとる
置き場所探してオレンジキャップ
器用にすくうは黄色のおたま
新たなカップに赤色ケチャップ
色みは鮮やか香りもふくよか
店長乗り出しほほうとうなづく
ほかほかポテトをセットに添えて
博士にケチャップ差し出した
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博士はその場でそうっと容器の真ん中に
狙いを定めて逆さに指しゆび差し入れた
押されてへこんだケチャップ液面
そのあとはじけてとぷりと反発
くるりと指先とりまいた
静かに指を引き上げる
博士の口の高さで止まる
見守るケチャップマンと乗り出す店長
大きく開いた博士の口もと
ぽっかり穴あき ゆっくり指先
移動の軌跡 吸い込む空気
口もと 指先 しゅるるるる
はむり
吸い付く口と引き抜く指との間には
寸分逃げ道わずかのすき間もまるでなし
ケチャップ残らず博士の口におさまった
舌の上 ケチャップくるりと回す度
下と上 博士の口もと波うった
もじもじくちびる一文字
ピンと引かれたその刹那
光の加減か目の錯覚か
目をまるまるした博士の頭
ずむずむずむりと大きくなった
その後もケチャップなめ続け
口に入れてはずむずむずむり
少しづつだが確実に
トマト頭が大きくなった
カップのヘリまでさっぱりぐるりと平らげて
ポッケの小銭できっかりちょうどのお支払い
きびきび博士は踵を返し
肩で風きり帰り行く
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最後のお客を見送って
清算 清掃 施錠で終了
シャツを着替える店長と
着替えと無縁のケチャップマン
今日の反省明日の確認まくしたて
ふうと一息店長が
向きを直してゆっくり言った
今日はよかったじゃないか。あんたのケチャップが初めて売れたんだ。まあ変なお客だったけど、客は客だ。お天道様が努力をしっかり見ていてくれたのかな。明日からはちょっとカウンターに出てみるか。うちはケチャップも置いていますよってな。
へとへと疲れも見せないで
がははと笑いも豪快に
ばしばし背中をたたいては
端々言葉が弾んでる
ケチャップマンはそれ聞いて
うれしい気持ちはあるけれど
自分の目指したやりがいと
照らし合わせて大きな違い
はあと言って恐縮しきり
それよりほかの表現を知らず
気持ちの整理もできぬまま
その日もひとり家路についた
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あくる日は
揚げ場を預けて朝から初めてカウンター
昨日の奇妙な出来事の
記憶に浸る暇もない
早い時間のことだった
ぱつりと膨れた赤頭
博士がふたたび現れて
果たしてケチャップ注文す
足りないぶんだけ なめさせろ
タスケが欲しけりゃ なめさせろ
増々熟れて赤深く
ぐらぐら頭をゆらしては
朗々歌うはあのしらべ
店長口元ヘの字に曲げて
ケチャッップマンに返事を任せた
はいただいまとケチャップマン
片手でキャップを取り外し
手早くケチャップ盛り付ける
どうぞと短く低い声
堂々目の前差し出した
博士はその場で指ちゃぷり
こぶしもほうばる大口で
吸い付きケチャップなめだした
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ちゃっぷり ずんむり
ちゃっぷり ずむり
博士がちゃぷちゃぷなめるたび
頭は着々ずむりとふくれた
ちゃっぷり ずんむり ずんむずむ
博士がちゃぷちゃぷなめるたび
真っ赤に増々うまそに熟れた
ちゃっぷり ずんむり ずんむずむ
ちゃっぷり ずんむり ずんむずむ
すっかりケチャップ空になり
ずんむり頭は今にも天井届かんばかり
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ぱっつり博士はポッケの小銭で
やっぱりちょうどのお支払い
頭の重みで博士の足どりふらふらり
頭の幅で出口のドアにつっかかり
ぽっかり呆然店長が
我に返って笑って言った
タスケが欲しけりゃって、タスケが必要なのはあのおっさん自身だな。でもなんだろうねえ、あの歌は。足りなきゃなめろとか、タスケがとか言っているけど、お前さんのケチャップには何か秘密があるのかい。
ケチャップマンにはまるっきり
秘密はおろか心当たりもなし
ポテト屋来たのは金のため
懸命揚げるは店のため
カウンター出たのは言い付けで
ケチャップ求めた変な客
言われたことをそのままに
疑うことなく従った
真っ赤な胴体じっと手をあて
押したぶんだけ上がる液面
もどる圧力感じては
二三度ゆっくり繰り返す
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翌朝やっはり開店直後
予想のとおりに博士が登場
天井ぎゅうぎゅう赤頭
蛍光灯を遮って
店内にわかに暗くなる
ぱりぱりつっぱる面の皮
ぐらぐら頭が歌いだす
くったくたの ばっすばす
足りないぶんだけ なめさせろ
タスケが欲しけりゃ なめさせろ
博士の華奢な胴体が
一点支える危険な状態
わずかでも バランスとり方誤れば
すぐにでも ボトリとこちらに崩れてきそう
頭が膨張拡大されて
声も反響増幅された
歌の響きはまるで巨大な船の底
ごおんごおんと轟音騒音エンジン音
ケチャップマンに隠れるように
避難していた冷や汗店長
ジェスチャー交えて訴えた
おい、ケチャップマン、何とかしてくれ。
これじゃあ商売になりやしない。
確かにケチャップ出す以外には
博士の暴挙をおさめる手立ては見当たらず
うなりをあげる歌声の中
初めてはっと気付くのは
まさに自分のケチャップが
必要役立つその実感
ケチャップ求めて三度も続けてくるのなら
ちゃんと感想を伝えてほしい
ケチャップ出してるこちらに対し
ちょっとは配慮を見せてほしい
自分のケチャップ中心に
事が起きゆく楽しさ自信
ところがそれらは感じるそばから形を変えて
自分の理解の外側で
事が進みゆく怒りと不満に移っていった
ケチャップ正面向き直り
暴挙に一矢を報いる行為
自分の意志をむき出した
お客さま、足りないぶんとおっしゃいますが、
どれだけたりないのでしょうか。私のケチャップが何かの助けになっているのなら、わたしにもぜひ教えてください。
しゃべり終えるか終えないか
言葉にかまけて注意を欠いた時だった
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はぷり
乗り出し突き出たキャップの先に
博士が直接吸い付いた
じゅっぴる じゅっぴる ふんこらり
ケチャップ吸い込む引力猛し 鼻息荒し
吸ったら吸うだけ頭もずむり
じゅっぴる じゅっぴる ふんこらり
店長慌てる助けも虚し 止める術なし
あれよあれよでケチャップ目減り
ふごへし ふごへし くっぱたし
絶えず吸い込む隙き間なく
容器は真空 スリムにヘこむ
ふごへし ふごへし くっぱたし
トマト頭はとどまらず
どんどん膨張どこまでも
いつしかお店はトマトの頭でぎゅうのぎゅう
逃げ場もないほど身動きとれずみっちみち
ずんむり ずんむり もうムリだ
ずんずんずんずん
むりむりむりむり
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ふばつ
とうとうトマトの頭が破裂した
わずか一瞬の冷気に次いで
赤一色のケチャップ溢れて押し寄せた
これほど大量のケチャップは
これまで誰も見たことなし
とっぷくとっぷく ぬんぬんぬん
トメイト博士の立ってたあたり
どんどん沸き出し勢いやまず
店長めがねにケチャップついて
前後の目測まったくつかず
胸までどっぷりケチャップまみれ
どっちが出口かどっちがレジか
とっぷくとっぷく ぬんぬんぬん
若い娘の純白ブラウス真っ赤に浸り
サラリーマンの重たいカバンも押し流し
ポテトの香りに心踊る子浮き上げて
はしゃぎじゃれあう学生たちに飛びかかる
流れるケチャップ全てをさらってとどまらず
お店の壁にとっつき返して
くるりと立ちあぐ赤波の突端
合わさり別れ盛り上げ落ちる
ケチャップ波うつ赤面の随所で
蛍光灯の軽躁な光のともし火が
生まれて消えてをぱかりぱかりと繰り返す
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こんこん湧き出るケチャップは
店内たまって溢れ出て
喧々賑わう街中へ
解き放たれた流れ出た
お店の椅子もポテトもレジも
カップもコップもキャップも客も
みんながみんな店の外へと流れ出た
広い居場所がひらけたことで
のたうつケチャップやがて秩序を取りもどし
逆らうことなくあたりを包み
優しくそっと街を撫でた
道行く人のかかとにタッチ
あいさつしてから回り込み
足元とくりと巻き含む
太陽照らしたケチャップは
ぺくらぺくらと光の帯を
振りまくように輝いた
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ポテト屋溢れたケチャップで
街は一面赤じゅうたん
あっちの通りもちゃぷりとぷり
こっちのお店もちゃっぷりとぷり
次から次へと押されるように
辻から辻へと真っ赤な波が広がった
みんな最初は茫然と
ただただケチャップ眺めてた
ところがどこからともなくに
自然と味見が始まった
さすればケチャップなんとも美味や
これほどおいしいケチャップは
これまでおよそ食べたことなし
舌先にはじけて生まれた火照り
奥へ伝ってかぶさる甘み
横へ広がりほほの内側じわりと震え
とっつき返してまざっておいしさ反響す
とっぷりさりとなめる指先止まらずに
ゆるむ口もとほころぶ目もと
それを見ていたお隣の
きれいなご夫人とっぷりさり
それを見つけたお隣の
若いカップルとっぷりさり
それを見かけた運転手
タクシー止めてとっぷりさり
それを見下ろすレストラン
フレンチシェフがとっぷりさり
それを見上げるお向かいの
八百屋のご主人とっぷりさり
それを見たから気になって
散歩のおやじもとっぷりさり
それを見たのか通り越し
ビジネスウーマンとっぷりさり
どこからどこへとどこまでも
みんなケチャップにうっとりなり
くつの中からズボンから
あっちもこっちもケチャップまみれ
シミが付くとか付かぬとか
言ってはおれぬ言っても無駄だ
見渡す限りに大量の
ケチャップ囲まれ逃げ場なし
ああ参ったやらおいしいやらで
なにやらふわふわ妙な気分
そのうちあたりを見回せば
ケチャップまみれてケチャップなめる同じ顔
くすくすこぼれる笑み集い
人から人へと笑顔を伝え
とっぷりとっぷりケチャップ揺れた
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あれから十日が経過して
街は落ち着き元通り
あの日は体が空になり
すっ飛び飛んだケチャップマン
ゆっくり七日の有給休暇と
お店のポテトのお見舞い食
店長の看病足繁く
やっとこお店に復帰した
ケチャップ事件の張本人
迷惑かけて面目ない
恐らくお店も閑古鳥
恥じ入り出社がとんでもない
びっくりするほど人だかり
途切れぬお客でてんてこまい
大量ケチャップ
どうやらここから流れてきたと
あの味求める問い合わせ
なくても別ので間に合わせ
お陰でお店は連日大いに賑わった
一日限定五十杯
ケチャップ始めた告知する
待ってましたの大盛況
引きも切らずの大行列
お昼を待たずにすっかり体は空になった
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お店の多忙さ除いたら
ケチャプマンの生活に
さほど大きな変化なし
ポテトの揚げ方一人前には程遠く
ドジを踏んでは怒鳴られる
お店の中でも街出ても
ケチャップ飛ばす不注意失態
あいも変わらず繰り返す
レジ閉め片付け仕事を終えて
すっからかんでくったくた
自宅に着いて部屋にひとりの赤電球
窓から眺める街の灯も
増えもしなけりゃ減りもせぬまま輝いた
ところが以前と比べると
一人であれこれ悩むことがなくなった
人気の限定ケチャップを
天職得たと実感できたわけでなし
むしろそんな天職や本当の居場所や個性やら
そんな言葉が頭からふつと消えていた
消えた代わりじゃないけれど
よく来てくれるお客のことを想像したり
人気のケチャップさらに美味しくするために
どうすりゃいいのか
考えたりする様になっていた
同じ季節はぐるぐると
繰りくるめいて見えれども
やはりそれぞれ毎年そっくり違うもの
眺めていれば飽きもせず
気付かぬうちに積み詰まれ
どこか知らない倉庫の隅に
整頓梱包されおりあらん
くたっとかがんでばすっと飛ばす
ケチャップマンのあの姿
それ見た誰かが言ったのか
人気の限定ケチャップは
「くったばすケチャップ」と名付けられ
変わらず皆に愛された
どこかで聞いた言葉だと
訝しがってた店長も
口には出さぬが感謝の気持ち
正式メニューに書き加えた
でもなんだかちょっと長いんだよなあ。縮めるか。おい、ケチャップマン、三番テーブル、「タスケ」、二カップ追加だよ。
終
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